鉄拳8はクソゲーか?
一通り触ってみた感想を書きたい。
特に本記事ではシリーズ未経験者の視点に立って書いたので、留意して読んで頂けると助かる。
目次
鉄拳とは?
有名な3D格闘ゲームで、初代はアーケード版で1994年に登場し、約30年の歴史がある。
4つのボタンがそれぞれ左パンチ、右パンチ、左キック、右キックに対応するという独特なシステムが最大の特徴だろう。
格闘家やレスラーから、ロボットやクマといった個性豊かなキャラクターが多く揃っている。
それぞれの技の数も膨大で、非常にボリュームのある格闘ゲームと言える。
複雑なシステムに加え、各数十ものキャラと膨大な技の対策、一部の非常に難しい技入力、最大ダメージのコンボなど、突き詰めるほど難易度が跳ね上がるゲームでもある。
良かった点
クロスプラットフォーム対応
今回、鉄拳8をやってみようと思った理由の一つ。
今作からクロスプラットフォームに対応しており、PC版とPS版、Xbox版と相互に対戦が可能になっている。
鉄拳7まではSONYの事情で非対応だった。
PS3のアケコンであるRAP3を持っているが、PS5で使うためには中華製の怪しげなコンバーターを使う他なかった。
PC版ならRAP3でも問題なく動くので、快適に遊べている。
AIゴースト
個人的に鉄拳8をやろうと思った理由、その2。
自分や他のプレイヤーの動きをAIが学習する仕組みがある。
完全に模倣する訳ではないが、結構似通った動きをしており、それっぽく出来ていると思う。
対人戦が苦手もしくは嫌いな人でも、自分のゴーストと戦い続けるだけでもそれなりに楽しめそうである。
スペシャルスタイル
ワンボタンで簡単に空中コンボやパワークラッシュ、下段攻撃が出せる。
旧シリーズで最大の問題だったのが技の複雑さであり、各キャラクターごとに共通したコマンドで出せる技がほとんどない。
しかしスペシャルスタイルを使うことで、全く事前の知識がなくても、有力な技やコンボを簡単に繰り出せる。
特に例えばレイナや一八の場合だと、最速風神拳がワンボタンで出せてしまうのは破格。
本来、最速風神拳はこのゲーム屈指の入力難易度が高い技で、練習しても安定して出すようになるには相当な時間と練習量が求められる。
発生の早さと硬直の短さ(ガードされても自分が有利という)から、抜群の使い勝手の良さを誇る。
それを初心者でもワンボタンで出せるようにしたのは、かなり異例と言える。
技やシステムに対する理解があれば、スペシャルスタイルでも十分に対人戦で戦っていけると思う。
パワークラッシュ
鉄拳初心者あるあるなのが、相手の固めを返せず、一方的に殴られ続ける状況に陥ること。
今作では相手の上中段技を一方的に潰せるパワークラッシュという技が実装され、発生も早いため切り返しが容易になった。
ただし下段と投げに弱いという性質がある。
どちらにも強いジャンプステータスの技(空中に飛ぶ技)と組み合わせれば、一方的な状況が生まれにくくなった。
操作難易度の緩和
ヒート発動中は最速風神拳の入力が緩和されるなど、こちらも時間限定ではあるものの過去作からの緩和が行われている。
途中から操作可能なリプレイ
他の格ゲーにもない画期的な追加要素がリプレイ機能である。
対戦リプレイの途中から好きな側のキャラクターを操作できるという、とても面白い仕組みになっている。
固めや起き攻めの防ぎ方、確定反撃や割り込みなどの練習にとても重宝しそうだ。
回復可能ゲージ
攻める側を高く評価することで、より積極的なゲーム展開になりやすく、待ち行動が相対的に弱くなっている。
結果的に緊張感が高められて、対戦ゲームとして面白くなっていると思う。
各キャラクターのエンディング
今までのシリーズのエンディングも面白かったが、今作も非常にユニークで楽しめた。
悪かった点
初心者参入の難しさ
基本操作と戦術の説明が不十分
受け身や起き上がり攻撃も一部しか解説されておらず、十分な分量ではなかった。
また鉄拳での基本である固めへの対処方法と練習も欲しい。
CPUの攻めは非常に甘く、受け身や起き上がり、固めに対する練習にならない。
スペシャルスタイル
空中へ打ち上げると自動的に技が切り替わる仕組みだが、時々技が切り替わらないことがある。
入力している側が想定していない技が出ることもあるので、使っていて気持ち悪い部分が見え隠れする。
技の豊富さ
スペシャルスタイルを卒業した後に待っているのが、圧倒的な技の種類である。
鉄拳8の初期キャラクター32名はどれも100種類以上の技が用意されている。
全てを使いこなす必要はないが、発生の早さや硬直の長さなど、多くの技の中で有用なものを自分で見つけなくてはならない。
また対戦ゲームなので、相手の技を熟知していることも大切である。
相手が繰り出す技の対策を知らなければ、一方的に殴られるだけのゲームになることも鉄拳では珍しくない。
置きで潰すか、横移動技か、ガード(しゃがみガード)からの確定反撃か、ジャンプステータスの技か、パワークラッシュか。
多くの知識と経験値が求められるゲームでもあるのだ。
練習も必然的に多くなり、初心者が中級者になるまでの道のりはどうしても長くなるのが鉄拳である。
努力することが苦手な人ほど向かない。
操作難易度
ヒート状態で緩和されるシーンが出て来たものの、未だにハードルの高いキャラが多い。
入力を複雑にしたパワーアップ版を用意して差別化を図っているが、プレイヤー層を広げるなら不要だったと思う。
入力は簡素化し、格闘ゲームの醍醐味である読み合いやコンボに集中出来るようにすべきだった。
カスタマイズ
どれも似通ったアイテムばかりで、個性を出しにくく面白みがない。
各キャラクターごとの専用アイテムをもっと充実させて欲しかった。
キャラクターと課金要素
今後のDLCで追加される予定らしい。
購入した人とそうでない人で格差が生じることは避けられず、対戦ゲームとしては好ましくない。
バンナム伝統の悪いお家芸である。
ゲームの勝敗に影響を与えないカスタマイズ要素や、モーションがほぼ同じのコンパチブルキャラクターなどを課金要素にするべきだった。
CPUの弱さ
最高の難易度でも、ストリートファイター6よりも遙かに弱い。
ゴーストも試しにランキングの一番強い人をダウンロードしてみたが、特に違いが感じられなかった(むしろ通常のCPUより弱くなったまである)。
原因は対人戦のような起き攻めや厳しい択を仕掛けてこないからだろう。
練習としてはイマイチ。
そのため対人戦との乖離が大きく、CPU戦からのステップアップが難しくなっている。
ストーリーモード
3Dアニメ映画に格闘ゲームが差し込まれて展開していくモード。
気合いを入れて作っているのは非常に分かる。
ただその熱量をチュートリアルや、絶妙な難易度のCPU開発などに向けて欲しかったと思う。
物語は鉄拳7をやっていないので、何が起きているのかはあまり分からない。
ただキャラクターを全員登場させようとするあまり、それぞれの出番が相当薄くなっていることは間違いない。
感想としては展開も王道過ぎて、「なんやかんやで派手に終わった」くらいしか記憶に残っていない。
少なくとも一度やれば満足する内容であり、リプレイ性は非常に薄い。
余談だが主に風間 仁を操作することになるが、デビル仁になったり、他のキャラも少しずつ使っていかなくてはならない。
スペシャルスタイル推奨(得意なキャラはアーケードスタイルで)のモードでもある。
アーケードクエスト
恐らくは初心者向けのチュートリアルとして用意されたのだと思われる。
まずストーリーはほとんど無いようなもの。
中途半端さだけが目立つ。
ファイトラウンジ
アケコンでは視点変更が出来ず(スティックが1本しかないため)に操作性は最悪である。
またアバターは海外ユーザーに配慮したためか、見た目がバタ臭くてダサい。
感想
鉄拳が初心者を参入させたいという、開発側の意図は確かに伝わってきた。
確かに今までの鉄拳シリーズでも、スペシャルスタイルのおかげで取っつきやすさは一番だとは思う。
ただそれは鉄拳シリーズでの話であって、格ゲーとして見た場合、初心者にとっては未だに難しいタイトルには変わりない。
スペシャルスタイルは言わば、自転車の補助輪である。
いずれは取り外さなければならず、外してから本当の鉄拳が始まると言っても過言ではない。
しかし外す部分のサポートが、鉄拳8のゲーム内だけで不十分になっている。
従ってサイトや動画などの情報を漁り、システムの理解や技術の習得をしていく必要がある。
それが非常に残念だと感じた。
シリーズ経験者にとっては、充実したトレーニングとリプレイモードもあって、今作は非常に出来が良いと思う。
個人的にはAIがもうちょっと優秀だったら良かったが、最高難易度でも同じ技を繰り返し出すだけで勝ててしまう。
AIというのだから対戦中にプレイヤーの癖を読み取り、弱点に対して厳しい攻めと的確な守りを行える面白いAIを作ってほしかった。
結局は過去作と同じく、緊張感に欠ける程度の強さである。