バルダーズゲート3(Baldur’s Gate 3)はクソゲーか?
THE GAME AWARDS 2023において、Game of The Yearを受賞したバルダーズゲート3(以下BG3)。
最初は全く知らない洋ゲーが受賞した程度の感想しかなかった。
しかしよく調べてみると、あのディヴィニティ:オリジナル・シン2を開発したLarian Studiosの最新作だという。
すぐにSteamで購入して、苦戦しながらもクリアしたのでその感想を書きたい。
目次
BG3の特徴
著名なアメリカのテーブルトークRPG(以下TRPG)であるダンジョン&ドラゴン(以下D&D)をゲーム化した作品。
剣と魔法があるファンタジー世界で、人間だけでなく他種族が多く住んでいる世界が舞台である。
戦闘はシミュレーションRPGのようだが、ヘックスのようなマスはなく、かなり自由度が高い。
ディヴィニティシリーズを遊んだことのある人なら、雰囲気はかなり似ているで割とスムーズに遊べると思う。
良かった点
自由度と運命
BG3を評価する上で、多くの人が異口同音で唱えているのが自由度だろう。
弱きを助け強きを挫く王道のストーリーから、それとは全くの真逆に悪者の味方をして殺戮や窃盗を繰り返す非道な遊び方まで出来る。
選択次第で登場人物のほぼ全てと仲間が簡単に死んだり、離脱するなど、スリリングで取り返しの付かない要素も多くある。
戦闘も敵と遭遇して、すぐに戦いが始まることは半分くらい。
大抵は会話が始まり、威嚇や説得することで能力値次第では、戦闘を回避することも可能である。
もちろん問答無用で、全てにおいて実力行使で解決するのもアリ。
戦闘を回避しても経験値が与えられる(イベントや場所への到達でも経験値を取得する)ため、キャラクターはしっかり成長する。
つまり自分の操作するキャラクターのロールプレイを最大限に尊重しながら、楽しめるという訳だ。
一方で判断と選択肢、ダイス次第では、望まない結果をもたらすこともある。
セーブ&ロードを繰り返すのも悪くないが、運命だと思って潔く受け入れる楽しみもTRPGである。
成り行きを楽しめるようになれば、BG3を長く楽しめると思う。
リプレイ性
前述の通り自由度が高いため、1周のプレイで全てのイベントを見て回るのはおそらく無理だし、あまり効率が良くない。
恐らく多くのプレイヤーは、新しくキャラクターを作り直して楽しみたいと思うだろう。
非常に長く楽しめる作品と言える。
キャラクターの感情
過去作であるディヴィニティと比較して、会話シーンではキャラクターがクローズアップされて、会話だけでなく表情の変化も分かるようになった。
日本のRPGでは細かくキャラメイクこそ出来るものの、表情という点では今ひとつ。
凄い技術で驚いた。
日本語版
日本語対応してくれたのは、非常にありがたい。
英語だと固有名詞や細かいシステムの理解も必要なため、よりハードルが高くなってしまう。
世界観の奥深さ
昨今のライトノベルやRPGでは、オーソドックスな日本のRPGらしい似通った設定が多く、個性に欠けていた。
BG3はダンジョン&ドラゴンをベースに、長年蓄積された世界観の奥深さを、圧倒的なビジュアルによって表現されている。
世界観が大切だと思っている人にこそ、勧めたいゲームである。
悪かった点
システムの説明不足
TRPGのシステムが使われているため、触れたことのない人にとっては非常に分かりにくい。
例えば武器や呪文のダメージ表記である1d6+1は、全く分からなかった。
後に調べてみると1d6とは「6面ダイスを1回振る」という意味らしい。
つまり1d6+1とは「1~6のどれかに1を加える」、つまり結果として「2~7」ダメージになるということだ。
これ以外にもアーマー・クラス(以下AC)はダメージを減らすのではなく、回避判定に使われると言った、TRPGを知らない人には直感的に分かりにくい独特なルールが多く存在する。
D&Dを遊んだことのある人ならスムーズに遊べると思われるが、そうでないならまず調べるところから始めなくてはならない。
細部の判定についてはゲーム中での解説は十分とは言えず、TRPG初心者には厳しい作りになっている。
会話の文字量と専門用語
会話の文字量と付随する専門用語がとても多く、登場人物らは聞いたことのない単語をさも常識のように話す。
そのため過去の会話を思い出しながら、想像力を働かせるしかない。
そのような作業が好きな人は向いているだろうが、合わない人はかなり疲れるし、ひょっとしたら興味を持てないかもしれない。
読み飛ばせば今度は物語に付いていけなくなるため、本作を楽しめない原因になりかねない。
最低限の世界観が分かるように地名や神、種族と言った用語を、例えばゲーム内の本などを序盤に配置して理解するための手掛かりを用意して欲しかった。
ゲームバランス
原作のD&Dが悪いのか分からないが、一部のクラスや特技が弱い。
特に特技は、有用なものとそうでないものの差が顕著で、数が多いもののほぼ同じ選択になる。
使い物にならないほどではないが、もう少しバランス調整して頂きたい。
洋ゲー特有のポリティカルコネクトレス
外見を重視するのは差別的だという風潮もあるが、ゲームの中くらいは美人が欲しいとは思う。
バルダーズゲート3では、事前に用意されてそれぞれの物語を持つオリジン・キャラクター以外に、カスタムキャラクターが作成出来る。
顔については細かい調整は出来ず、10種類のプリセットの中から選ぶ方式である。
MODを入れていない状態(以下バニラ)で用意されている顔の中で、一番美人だったのが上記画像である。
他はかなり趣があり、癖が強い。
しかし表情表現が豊かすぎるためか、会話中によく変顔をしてしわが入るなど、いろいろ台無しになるのが気になった。
MODで顔の選択肢を増やしたり、皺を抑制したり出来るので、気になる人は検討して欲しい。
当然ながらMODを導入できるのはPC(Steam)だけなので、PS5とXboxな人は諦めるしかない。
ロマンス要素
仲間が主人公に対して恋愛感情を持つ。
これだけなら聞こえは良いが、昨今のLGBTに対する配慮のためか、かなり混沌としている。
このBG3の世界では、種族を問わず肉体関係を持つハードルの低さに加え、特にバイセクシャルが多数派である。
例えば主人公が男性なのに、仲間のおっさん(複数人も)から言い寄られるのは、衝撃的であり困惑しかない。
「なかなか感じの良くて頼もしい奴だと思っていたのにまさか…」と、なんでゲームで悩まなくてはならないのか。
どちらでもない点
難易度
本作はRPGであるが、各エリアに登場する敵の数やイベントが限られている。
いわゆる従来のRPGでは、お馴染みのレベル上げによる難易度調整が出来ない。
ゆえに戦闘で勝ち続けるには、パーティ編成やキャラクター育成(各クラスや呪文、特技)の理解と工夫、入念なアイテムの準備、敵のギミックを知る、交戦時に有利な状況を作るなどが求められる。
序盤からいきなり多くの呪文とクラスが登場し圧倒的な情報量のため、慣れるまではしんどいと感じる人が多いだろう。
ただシステムに対する理解が深まれば難易度は下がっていくため、プレイヤー自身の習熟度が大切である。
つまりその試行錯誤の過程が楽しめるかどうかが、本作を楽しむ上で必要不可欠だと言える。
初見殺しとオートセーブ
特に気になったのが初見殺し要素である。
戦闘中にギミックに対して予想を立てて行動するも、分かりにくいことや見落とし、勘違いもあって、結果として手遅れになりやすい。
単調さを防ぐ意味では良かったと思うが、もう少し初見でも攻略の見通しを立てやすくする工夫は欲しかった。
そのためのオートセーブだと思うのだが、必要なところでセーブしてくれないことが多いため、事前の手動セーブは必須。
数時間のプレイが消し飛ぶことも何回もあって、モチベーションが著しく低下した。
感想
客観的にとてもボリュームがあり、丁寧に作られた超大作。
一方で面白いと思えるだろう人は限定的で、誰でも勧められるゲームではないと断言出来る。
特に日本人にとって馴染みが薄いD&Dの世界観ゆえに、外国人プレイヤーに比べて評価は下がることは間違いない。
事前にどういうゲームか知らず、よくRPGだと思って気軽に始めると、楽しめずに途中で投げる可能性が高いだろう。
僕はディヴィニティ2を既に経験しているので、どんな内容か(文章の多さも)は大体想像が付いていたので、そこまで苦痛ではなかった。
ダイスを使ったD&D特有のシステムは馴染みがなかったものの、それでも少しずつ分かってきて今ではかなり楽しめている。
- 想像力を働かせるのは苦手
- 長い文章を読むのは嫌い
- 試行錯誤は嫌
- 完璧でないと駄目
これらに当てはまる人は、徹底的に向かないので、最初から買わない方が良い。
逆にどれも当てはまらなかった人は、バルダーズゲート3に対する適正があるかもしれない。
Game of The Yearに選ばれるだけの面白さは確かにあるので、ぜひ挑戦して欲しい。