ニュースで詳しく教えてくれないイスラエル・パレスチナ問題の非常にややっこしい問題を出来るだけ簡単にまとめてみる

イスラエル・パレスチナ地域(Googleマップより)

はじめに

2023年10月7日にパレスチナ自治区ガザを支配するハマスが、イスラエルへテロ攻撃を行った。

2023年パレスチナ・イスラエル戦争 – Wikipedia

イスラエル側の民間人に多数の死傷者を出し、また人質としてもガザ地区へ連れ去られた。

その後、イスラエルの反撃によってその何倍ものガザ地区のパレスチナ人(多くの子供を含む)が死亡している。

ニュースでイスラエルがテロを受けたとか、そのイスラエルがパレスチナのガザって場所へ攻め込んだとかやってるけど、これは一体何が起きているの?何で争っているの?

それが知りたければ、「世界で最も解決が難しい紛争」と呼ばれている、イスラエル・パレスチナ問題について理解を深めないといけないね。

何だか複雑そう。

客観的かつ公平・公正に伝えようとするなら、どうしても長くなってしまうのだよ。

長くて難しい話は苦手だから、出来るだけ簡単にお願いね。

イスラエル人(ユダヤ人)とパレスチナ人とは?

イスラエル人(ユダヤ人)

イスラエルはユダヤ人によって作られた国である。

ただしイスラエル人全てがユダヤ人という訳ではなく、パレスチナ系イスラエル人もいる。

またユダヤ人についても人種という民族的特徴を持つ集団ではなく、宗教的または文化的集団である。

それゆえに白人だけでなく黒人のユダヤ人もいる。

ユダヤ人って言えば、「アンネの日記」のアンネがそうだよね。

アンネ・フランク – Wikipedia

他にも物理学者のアインシュタインや数学者のジョン・フォン・ノイマンもユダヤ人デスヨ。

アルベルト・アインシュタイン – Wikipedia

ジョン・フォン・ノイマン – Wikipedia

今例に挙げた人々は全員ユダヤ系ドイツ人だったね。このためユダヤ人と言えば、白人のイメージが根強いかもしれないが、黒人のユダヤ人もいるのだよ。

じゃあ日本人とかインド人みたいに、見た目だけじゃ分からないんだね。

ユダヤ人の定義がよく分かりマセン。

実は厳密な定義はないのだよ。昔は「ユダヤ教を信仰するユダヤ人」がそうだったけど、イスラエルによれば、ユダヤ人の母から生まれた人や、ユダヤ教に改宗した人もユダヤ人という場合も認められるようになったし、ユダヤ教の家系でキリスト教に改宗した人もユダヤ人と見なすこともあるそうだ。

ユダヤ人 – Wikipedia

パレスチナ人

元々イスラエルが建国される前に住んでいた、主にイスラム教アラブ系の人々を指す。

イスラエルが建国された後に追い出され、パレスチナ難民として主に周辺のアラブ諸国に離散することになる。

パレスチナという呼称は、ローマ帝国やピザンチン帝国などが使用していたが、第一次世界大戦後にイギリスが復活させた。

もともとパレスチナの人が住んでいたのを、後からイスラエルという国を作って追い出したってこと?それならイスラエルが悪いんじゃないの?

そう簡単にいかないだよ。その背景を理解するためには、歴史を紐解く必要がある。

歴史

【古代】イスラエル王国の誕生と滅亡、そして追放

ユダヤ人の先祖となるヘブライ人は、飢饉から逃れるために今のイスラエル・パレスチナ地域からエジプトへと移住する。

しかしエジプトで奴隷にされてしまい、そこから脱出した人々がエルサレムを中心としたイスラエル王国を建国する(紀元前11世紀)。

そのイスラエル王国は内乱によって、北部のイスラエル王国と南部のユダ王国に分裂し、それぞれアッシリアとバビロニアに滅ぼされる。

その後、ペルシア帝国、マケドニア、シリア王国、ローマ帝国とイスラエル・パレスチナ地域を領有する国家は変わっていった。

ユダヤ人はローマ帝国の属州だった頃に、独立を目指して反乱を2度も起こすが失敗する。

これによって多くのユダヤ人が追放されて、ヨーロッパを中心に世界各地へ離散することになる。

ユダヤの聖書である「ヘブライ語聖書」には、アブラハム(ユダヤ人とアラブ人の祖先)は神に約束の地カナン(後のイスラエル・パレスチナ地域)に行くように言われたという記述がありマス。どちらの人々にとっても宗教的に、イスラエル・パレスチナ地域は重要な地域だったのデスネ・

でも逆に言えば、同じアブラハムが祖先なんだからもっと仲良く出来ないのかな。

元は同じでも、今まで長年にわたって全く違う宗教を信じているから、それは不可能なのだろうね。

【中世】ヨーロッパでキリスト教に迫害される

ヨーロッパへとやってきたユダヤ人たちだったが、ヨーロッパではキリスト教が支配していた。

「キリスト殺し」の罪を背負うとされるユダヤ人(ユダヤ教徒)は、大多数のキリスト教徒からの迫害の対象になった。

ユダヤ人は土地を保有できないために農業は行えず、また職工にもなれないなどの職業差別もあり、さらには追放の対象となることもあった。

それでも中には高利貸しとして裕福になるユダヤ人もいたが、妬まれてより強い迫害を生んだ。

ユダヤ人の高利貸しとしては、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場するシャイロックが有名デスネ。

コウリ貸しってなぁに?氷を貸してくれる人?

お金を貸す商売のことだね。昔はあまり誇れる職業じゃなかった。今も(ボク個人はだけど)、良いイメージは持たないね。

「ヴェニスの商人」で描かれるユダヤ人は、悪意に満ちたユダヤ人の一般像を書かれていて、皮肉にも当時どれだけユダヤ人が差別や迫害を受けていたかを表しているよ。

【近世】シオニズムとホロコースト

シオニズム

19世紀末にイスラエルにユダヤ人の国を建国しようという、シオニズムいう考えが生まれる。

当初は各国で裕福な暮らしをしていたユダヤ人もおり、大きな賛同は得られなかった。

ただ1894年、フランス陸軍大尉のユダヤ人ドレヒュスのえん罪事件をきっかけに、運動は拡大していく。

スパイ容疑でドレヒュス大尉は終身刑を言い渡されたが、フランスの軍部によるねつ造だったことが、のちの再審によって明らかになっていく。この事件によって近世になってユダヤ人に対する差別はまだ残っているのだとして、ユダヤ人たちは憤り、そしてシオニズム運動が支持されるようになっていくのだ。

ユダヤ人の国を作って、自分たちの身は自分たちで守ろうって思ったのね。

その通り!これが今回の話の核心的な部分の1つだよ。

イギリスの支援

第一次世界大戦後、シオニズム運動を進めようとするシオニストらの積極的なロビー活動によって、シオニズム運動はイギリスからの強力な支援を受けることになった。

イギリスにとっては、

  • 裕福なユダヤ人から戦費を引き出したい
  • 中東の要衝であるパレスチナを支配したい
  • アメリカ系ユダヤ人にも影響を持ってアメリカを味方に付けたい

などという思惑があった。

しかしイギリスは第一次世界大戦中に、オスマン帝国支配下にあったアラブ人を蜂起させるために、アラブ人の独立支持も約束していた。

後にイギリス、フランス、ロシア帝国の間で結ばれた秘密協定と合わせて、イギリスは中東に関する3つの約束をしたことから、三枚舌外交などと非難されることになる。

ただイギリスの計画とは裏腹に、パレスチナではユダヤ人とアラブ人が衝突し、非常に困難な折衝を行っていくことになる。

じゃあ今イスラエルとパレスチナが争っているのって、イギリスのせいじゃん。イギリスってそんな悪いことしてたの?

それだけじゃなくて世界各地に植民地を作ったり、現地の人を奴隷にして物のように貿易で売買したりと、これ以外にも信じられないよう酷いことをイギリスはしてきたよ。当時は大英帝国なんて呼ばれていたし。

歴史は勝者が決めるとはこのことデスネ。もしイギリスが第二次世界大戦で負けていれば、大変な額の賠償金を払っていたことデショウ。

ナチスドイツによるホロコースト

ヒトラーの登場によって、迫害を恐れたユダヤ人はパレスチナへ多く移民することになった。

しかし増え続けるユダヤ人に対して、危機感を持ったアラブ人は反発を強めた。

パレスチナ統治に対して危機に直面したイギリスは、アラブ人への配慮からユダヤ人国家の否定とユダヤ人移民の制限を行う。

そして事件は起こる。

ナチスドイツによるユダヤ人のホロコースト(大量虐殺)である。

ヨーロッパのユダヤ人は、パレスチナのユダヤ人居住地へ逃げることが許されず、また多くのユダヤ人を受け入れてくれる国もなかったため、ナチスドイツによって大量虐殺されることになる。

結果としてヨーロッパのユダヤ人は壊滅し、その凄惨な状況には西欧諸国も強く同情した。

ナチスドイツのユダヤ人に対する虐殺に、各国は傍観者であったり、また悪意はないものの間接的に加担する結果になってしまった。

酷い!他の国なんて信じられない!確かにユダヤ人の国は絶対必要だよ!

完全にユダヤ人に感情移入してマスネ。

【現代】イスラエル建国と中東戦争

イギリスの撤退

第二次世界大戦終結後、イギリスは世界的な非難とユダヤ人、アラブ人から向けられる怒り、第二次世界大戦での総力戦による疲弊に耐えきれず、パレスチナから撤退することにした。

その後は引き継いだ国際連合で2国家分割案が採択されるも、アラブ側がこれを拒否しテロが活発化した。

これに対して、ユダヤ人過激派によるデイル・ヤシーン村で起きた非武装の民間人の大量虐殺も発生した。

危険に感じたアラブ人らがパレスチナから逃げ出すことになり、建国への足掛かりになった。

え?イギリス最低じゃん。

自分で言い出したことなのに、最後まで責任持ってよ!

ただユダヤ人・アラブ人双方の信頼を失ったイギリスに、解決する力は残っていなかったから仕方ないと思うよ。

でもユダヤ人もアラブ人を虐殺していたなんてショックだわ。

一部のユダヤ人過激派が行ったことデスガ、ただアラブ人にしてみればその区別は難しいデショウ。

イスラエル建国

イギリスの撤退が完了した後、アメリカの支援を受けて、1948年5月14日にユダヤ人は独立を宣言する。

国家「イスラエル」の誕生である。

やったね!ユダヤ人の国が出来たよー!

でも、デイル・ヤシーン村の虐殺があるから、素直に喜べないよ…。

おやおや、さっきまでユダヤ人を応援していたのに。しかしこの問題の複雑さが、少しでも分かってきたかな?

うん、確かに複雑ね。

第一中東戦争

イスラエルが建国を宣言したのと同日に、アラブ連盟のエジプト・トランスヨルダン・シリア・レバノン・イラクが誕生したばかりのイスラエルに宣戦布告し、第一次中東戦争が勃発した。

戦力はアラブ側が圧倒的に優位だったものの互いの思惑から上手く連携が取れなかった。

一方のイスラエルも過激派と内戦の危機があったものの上手く収束させ、世界中から調達した軍事物資を活用しアラブ連盟を退けた。

ただ結果的にイスラエル全人口の1%が死亡し、同等の数のアラブ人も死亡した。

またデイル・ヤシーン事件と合わせて、アラブ人は自分の家は奪われ、そして追い出された。

後にパレスチナ難民となった彼らは、これをナクバ(大厄災)と呼び、今でも失った家の鍵を持ち続けている。

イスラエル強い!囲まれてたのに勝っちゃった!

欧米の支援も強力だったが、何より結束したイスラエルと、バラバラだったアラブ連盟との差が、勝敗を分かつ点になったんだろうね。

でも気になるのは、追い出されたパレスチナ難民だよ。何で自分たちユダヤ人がされたことを、相手にしちゃうのかな…。

パレスチナの離散

難民となったパレスチナ人(イスラエルに追い出されたアラブ人)は、トランスヨルダン・シリア・レバノン・エジプトへと向かった。

しかしそれぞれの国で厚遇されるはずもなく、差別や迫害の対象となった。

パレスチナの人は、中世のユダヤ人と一緒だよ。時代も宗教も違うけどさ。

2021年時点で、パレスチナ難民は約560万人いるソウデス。これは世界の難民の5人に1人の割合だソウデス。

パレスチナ難民の状況|パレスチナ子どものキャンペーン

パレスチナ人はイスラエルの誕生によって追い出された出来事をナクバ(大厄災)と呼んでいるが、世界的に見てもこれが悲劇的な大事件であることがよく分かるだろう。

現在に至るまで

その後もイスラエルは、西欧諸国の支援を受けながら、敵対するアラブ諸国との争いを続けていく。

一方の追い出されたパレスチナ人(パレスチナ難民)は、パレスチナ解放機構を立ち上げる。

当初は反イスラエル組織であったが、後にイスラエルと共存する方向に転換する。

イスラエルのラビン首相も和平の道を模索しアメリカの仲介によって、1993年9月13日にイスラエルとパレスチナの2国家解決を図ったオスロ合意に調印することになる。

翌年の1994年5月よりガザ地区とヨルダン川西岸地区のエリコで先行自治が始まる。

しかし和平に尽力したラビン首相は1995年11月4日に暗殺され、また幾度となくハマスとイスラム聖戦機構によるテロによって、多くのイスラエル人が亡くなり緊張が高まる。

そのため完全な自治が始まることはなく、イスラエルによる砲撃や空爆、そして包囲が続いている。

ラビン首相が暗殺されなければ、もっと今より状況は良かったかもしれないってこと?

そうかもしれないね。

ただ今もイスラエルで特に極右の人々はパレスチナ人を封鎖によって弾圧し、またパレスチナ過激派の人々はテロによって、状況を変えようとしている。

解決策

解決策って何かないの?元々は同じアブラハムが祖先なんだから、1つの国を作って仲良く住むとか。

お互いの憎悪はさておいて、少なくとも1国家による解決はイスラエルが望まないね。イスラエルは民主主義国家なので数で勝るパレスチナ人が多く流入すると、実権を握るのはパレスチナ人になる。つまりユダヤ人のために国でなくなってしまうからね。

だからガザ地区やヨルダン川西岸地区というパレスチナ自治政府を作って、イスラエルとパレスチナ、2つの国を作って解決しようとしているのデスネ。

だがそれも上手くいっていないのが現状だね。パレスチナ側(ハマスやイスラム聖戦などの過激派)のロケット砲でイスラエルに攻撃を続けている。そしてイスラエル軍も反撃と封鎖で、自治地区の経済は停滞し外部の支援物資に依存した劣悪な環境になっているのだよ。

どうすればお互いに幸せになれるの?

イスラエル人やパレスチナ人の中には、争いをやめて共存を望む人は少なからずいる。そして世界にも同じく平和を求める人々がいる。テロを許さず、弾圧も許さず、諦めずに訴え続けることが大事だと思うよ。

参考図書

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題 | ダニエル・ソカッチ, 鬼澤 忍 |本 | 通販 | Amazon

アメリカに住むユダヤ人が書いた本で、ユダヤ人でありながら客観的に書いたのが印象的だった良書。

より詳細にイスラエルの歴史や現状について書かれているので、オススメしたい。

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