「浜村渚の計算ノート」シリーズの概要と感想とか

浜村渚の計算ノート (講談社文庫) | 青柳碧人 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

昔、勧められて読んでたけど、最近になって最新刊まで読み終えたので、概要や感想なんかを書きたい。

記事執筆時点では、11巻まで出ている。

浜村渚の計算ノートとは?

数学と推理を組み合わせたライトノベル。

数学教育がほとんど廃止された現代の日本を舞台としている。

少年犯罪の急増の理由として、理系科目を教えていることが原因だとした心理学者の論文が発表された。

それを受けて文科省は文系や芸術科目を中心とした教育へと刷新した。

その変革に受け入れられなかった理系科目の教員や教授らは、日本を代表する数学者、高木源一郎と共に、数学を義務教育へと戻しその地位を向上させるべく、「黒い三角定規」としてテロ活動を開始する。

恐るべきことに高木源一郎は、日本全国で使われていた数学教育ソフトに、人殺しをさせられる催眠プログラムを仕組んでいた。

39歳以下の社会人のほとんどはこれを利用しており、警察官も例外ではなかった。

よって数学が苦手な壮年と、一部例外的に見ていない20代の警官ばかりが、「黒い三角定規・特別対策本部」としてテロと対峙することになる。

そこで、数学が得意な外部の協力者として、ソフトを見ておらず、またテロに加担していないであろう、女子中学生の浜村渚が呼ばれることになった。

巻数について

1~9巻まで出ており、複数の短編で構成されている。

「3と1/2さつめ」、「8と1/2さつめ」は長編。

毎年1巻のペースだったが、2019年の9さつめを最後に、続編は出ていない。

感想

設定について

このような数学を排斥した教育改革を実際に行ったら、数学者に限らず日本は産業から衰退して、最終的に海外へ逃げ出す人が続出しそうではある。

かなり突拍子もない設定だが、ライトノベルだし、それに女子中学生と20代の警察官を主役にするためなのだろう。

主役が50代のオッサン数学者では、確かに読み物として魅力的かは微妙そうだ(個人的にそれはそれで面白そうだが)。

読者層

元々数学が嫌いな学生や社会人がこの小説を読んで数学を好きになる、ということは難しい。

もちろん本書では、随所に事前の数学知識がなくても分かる工夫がされている。

ただ数学が嫌いな人が、あえてこの本を手に取って読む理由はないだろう。

ある程度数学に対して興味があって、学び直したいというキッカケにはなるだろうけど。

恐らく、このシリーズを面白いと感じる層は、元々数学が好きな学生・社会人や中学・高校の数学教育者だと思う。

至る所にちりばめられた数学(目次が$\log 10,\log 100,\log 1000 \cdots$だったり)に、クスっと笑えるかどうか。

内容

主に取っつきやすい簡単な題材を物語の中心で扱っていることが多い。

指数や十進法などは、特に事前の知識がなくても分かりやすい。

一方で2次関数、三角比や組み合わせは、作中でも読者に理解してもらうためにかなり丁寧に説明されているが、やはりある程度事前に知ってないと分かりにくいと感じた。

例えば、三角比を「千夏の乙女心とサイトウくんとコスダくんの位置関係」で説明しているが、むしろ難解になった気も。

そしてやむを得ないことだが、題名としても使われたフェルマーの最終定理やBSD予想、カルダノの公式などは、ごく簡単な説明や名前だけの紹介に留まっている。

証明や解説などやっていたら、それだけで本が終わってしまうし、本の厚みも文庫本では済まされないので当然と言えば当然なのだろう。

総評

数学が苦手、嫌いで文学が好きでもないのに文系を選択する学生が多い中、逆に数学を排斥した日本という設定が、非常に興味深い。

ライトノベルという形で、数学の魅力を伝えようとする本シリーズは、希少かつ学術的にも価値があると思う。

しかし9さつめを境に、最新刊が出ておらず、まだ完結はしていない。

最近、完走しない漫画や小説が多いが、過去に数学に携わった一個人として、本シリーズは何とか最後まで続けて欲しいと願っている。

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