既存の著作物を利用した自作のグッズの著作権問題

バイクのステッカーを作っていて気になったので、色々調べてみた。

他にもTシャツやキーホルダーなどの外で身につける物、ぬいぐるみ、イラストなどSNSで公開する場合も共通している部分があるので、参考になれば幸いである。

前提

著作権

考えや感情などを創作的に表現した物(著作物)を作った人(著作者)の権利が、著作権である。

著作物

  • 本や作文、論文、脚本など言葉(図表も含む)によって書かれたもの
  • 曲や歌詞といった音楽
  • 絵画、イラスト、版画、彫刻、漫画などの美術
  • 地図や図表、模型などの図形
  • 写真や音など機材を使って撮影したもの
  • コンピュータプログラム
  • 映画やゲーム、テレビ番組など、映像と音、文字、プログラムが組み合わされているもの

ちなみに人物の顔や姿、名前などはプライバシー権(あくまで憲法第十三条の解釈上)で保護されている。

オリジナルグッズを自作することについて

複製権

まず著作物を利用して各種グッズを作る時に問題になるのが、複製権である。

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

著作権法 | e-Gov法令検索

つまり著作権者が自身の著作物を複製する権利を独占するということである。

なので他人の著作物を勝手に複製することは出来ない。

私的使用のための複製

自宅などの限られた空間での使用

しかし一部の場合、例外として複製が認められる場合がある。

その一つが第三十条の「私的使用のための複製」である。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

著作権法 | e-Gov法令検索

この「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」部分の解釈によって、複製と使用が認められる場合がある。

まず確実なことは、自宅などの自分や家族の者以外に見られることがない環境での使用であれば、全く問題はない。

法律上は元より、不特定多数に公開していない以上、著作権者も知りようがないのである。

公共での使用

ただ家の中だけではなく公共の場所でも使う場合、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」に含まれるのかで賛否が分かれている。

擁護派は「外で人目に付いたとしても個人で使っているから問題はない」と、「他者が見た時点で私的使用を超えた複製になる」という懐疑派である。

相談室・資料室 | 相談室・資料室 | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

法律事務所のブログなどでは後者がほとんどであるが、公益社団法人著作権情報センターに問い合わせて見たら前者であった。

確認しうる限り具体的な判例がない以上、いわゆる法律上のグレーゾーンという部分であり、この条文だけで合法か違法を判断することは出来ない。

実際に結論を下すのは裁判所の仕事になる。

ブログやSNS、オフラインでの集まりなどにおいて見せる目的での使用

これは不特定多数に見せることが主目的になっているため、私的使用であると肯定する意見は皆無だった。

二次的著作物(翻訳権、翻案権等)

元々の著作物から、翻訳や翻案等によって作られたものを二次的著作物を言う。

十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

著作権法 | e-Gov法令検索

ゆえに著作物である画像から、ステッカーやキーホルダー、ぬいぐるみ等を作ることは二次的著作物と言える。

ただこの翻訳や翻案等によって作る権利も、元々の著作物の著作権者が独占して保有している権利であるため、許諾が必要だ。

著作権者からの許諾

個人による申請

著作権者が複製権や翻訳権、翻案権について独占的な権利を有しているが、逆に言えばその著作権者から許可が得られれば問題ない訳である。

ただ一般的に、一個人が企業に対して許可を得るのはほぼ無理だと思った方が良いだろう。

権利を有している企業が、個別に個人へ許諾するのはかなりの負担を要し、またそれに見合った利益が得られないからである。

稀なケースとして、申請フォームを用意している企業もあるため、まずは調べてみるのが一番良いだろう。

企業側が包括的に許可している場合

最近では企業側が一定の条件下で、申請不要で使用可能な場合や、権利侵害を主張しないといったケースも出てきている。

ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン|任天堂

自分で描いたキャラクターのイラストやCGをホームページやブログに掲載しても良いですか? (著作物に関するQ&A) | 株式会社カプコン : サポート

製品内の素材の使用に関するQ&A|Key Official HomePage

著作物の利用が認められる範囲について – 初音ミク公式ブログ

よくある質問 / くまモンオフィシャルホームページ

今月から、スタジオジブリ作品の場面写真の提供を開始します – スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

それぞれの条件を満たした場合は、著作物の利用が出来る。

現実的な話

告訴される可能性

許諾を得ずとも、自作のステッカーを車やバイクに貼ったり、Tシャツやキーホルダーを身につけて外を歩き回ったりしても、著作権者から訴えられることはまずないだろう。

理由は著作権者が、次の2点を満たす必要があるからだ。

  1. 著作権侵害だと著作権者が気付く
  2. 違法行為によって何らかの損害が出る

しかし個人で行っているものを著作権者が気付くのはまず困難である。

仮に奇特な他者が著作権者に違法であると訴えたとしても、個別かつ軽微な事案で取り合って貰えないだろう(個人で許諾を得る場合と同じ)。

そして個人で作った物を身につけたことによって、損害が発生したと主張し認められるのは難しい。

現に東京ビッグサイトでは、アニメや漫画、ゲームの成人向け同人誌が公に売られており、その場合においても極端なケース以外は無視され続けている(黙認という人もいるが誤解を生む表現である)。

それらを飛び越えて、個人利用を積極的に取り締まると考えるのは合理的でない。

著作権者の思惑

このような議論を生み出す原因には、著作権者それぞれの思惑の違いがある。

著作権者によっては、著作権侵害によって損失が発生を危惧する。

一方で、多くの作品が次々と創出される中で、ユーザに著作物そのものが認知や注目されないと価値が生まれない、維持出来ないという面もある。

作品の注目度を高めていく戦略の中で、前述した著作物のユーザ側の利用を放置や黙認したり、また明文化して追求しない姿勢を見せたりしている訳だ。

ジブリのように著作物の価値を維持しようと、場面写真の提供に踏み切るようなケースも出てきており、今後も企業戦略として保有する著作物の扱いは変化していくだろう。

結論

全ては著作権者次第である。

大きな影響を与える場面で公開したり、営利目的で譲渡したり、作品や企業の品位を損ねるような物を作ったりと、重大な違反をしない限りまず著作権者から訴えられることはないと言える。

もちろん将来的かつ全ての事案を保証するものではないが、現時点でそのような報道や情報を見出すことが出来なかった。

そうは言っても、グレーゾーンであることは間違いない。

倫理的、道義的に気になる方は、避けるべきだろう。

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