漫画「スーパーカブ」がひどい件について

スーパーカブ(1) (角川コミックス・エース) | 蟹丹, トネ・コーケン, 博 | 少年マンガ | Kindleストア | Amazon

スーパーカブ (小説) – Wikipedia

原作が小説で、漫画、アニメとメディアミックス展開している作品がある。

最近カブに乗り始めたため、ついつい漫画を気になって読んでしまったのだが、悪い意味でかなり内容が引っ掛かる。

しかしAmazonでは高評価で驚いた。

引っ掛かった理由について書いていこうと思う。

あらすじ

地方で一人暮らしをする女子高生「小熊」が主人公。

両親も友だちも趣味もなく、平凡な高校生活を送っていたが、同じ高校生が原付に乗っているところを見て、スーパーカブに乗り始める。

そこから同じカブに乗る「礼子」を初め、様々な人と出会い、日常生活が充実し始める。

良かった点

女子高生とカブの組み合わせ

どちらも男性受けしやすく、また女子高生とオジサンが載るカブというギャップが面白い。

よくある日常系

人が死ぬこともないし、事件も起きないから、日常系の作品が好きな人は安心して読める。

悪かった点

主人公が途中からバイカス(バイク乗りのカス)になる

主人公がツーリング中に、スーパーカブでパンクした男の子と出会うシーンがある。

人助けをするつもりらしく、近くのバイクショップまで連れて行き、お店の人に工具を借りて主人公が有償(800円)で修理を始める。

ただ修理が終わった後で、男の子にナンパされた上に「同じカブ乗り」と言われて、苛立ってスネを蹴り飛ばすシーンがある。

完全にただの暴行罪。

あたかも自分は技術があって、修理の出来ない人間を見下したような態度が、見ていて不快でしかない。

自分も最初は初心者だったはずなのに、それに対する作中でのフォローが一切ない。

例えば、男の子が主人公が修理しているのを見て、出来ない自分を恥じて、自分でも詳しくなる努力をすることを目指す、とかだったら良かった。

日常系なら心温まる展開を読者は臨んでいるはずなのに、主人公の性根の悪さを露呈しただけのエピソードになっている。

お店の人も終始主人公の味方で、容認しているのがまた気色悪い。

別にお店に修理を頼むことは悪いことではないはずだが、本作ではそれを悪いことのように描いている。

二人乗り問題

気になったので調べて見ると、案の定、去年アニメで放映されて時に見事炎上したようだ。

原付アニメ「スーパーカブ」、二人乗りに「違反」の指摘も 製作サイドが語った演出意図 – 弁護士ドットコム

主人公が免許取得1年未満にも関わらず、原付二種で二人乗りをすることは、主人公らが作中でも触れている通り違法である(アニメでは違法だと触れてすらいないらしい)。

自転車の二人乗りも、アニメの世界じゃ日常茶飯事であるため、あえてこの作品のみ指摘するのも野暮かもしれない。

ただ「警察に捕まって違反点数と罰金を貰い、先生にも怒られて…でも二人乗りは楽しかった」という場面があれば、見ている人も特に違和感を感じなかっただろう。

高校生だからそういう失敗もするけど、反省して次から気を付ければいいんだというメッセージが欲しかった。

救助

主人公の友だち「椎」が、真冬に川に落ちて主人公に助けを求めるシーンがある。

主人公の判断で救急車に連絡することなく、自ら救助に向かう。

帰りは友だちを前カゴに乗せて走るのだが、当然人を乗せるように作られていないから危険であるし、濡れているのだから走ることで寒くてショック死するのではないかと思う

最終的に事なきを得るのだが、もし死亡していた場合はどうなるのか。

せめて最低限119番にかけて、そして分かるなら相手の両親にも連絡してから、急いで救助に向かうのが一般人の対応である。

自分なら必ず助けられるという傲慢さが、見え隠れする。

あまりにも無責任で無鉄砲だが、誰にも叱ってくれない。

ただ両親もおらず、友だちしかいないので、叱ってもらえる人がいなくて可哀想だという捉え方もある。

感想

法令違反だと批判する人に対して、「現実とフィクションを混同するな」という批判がある。

確かに漫画やアニメで法令を守れとか、誰かが現実で真似をするという主張は確かに無理がある。

たしかにフィクションだから許される部分があり、表現出来る内容がある。

あの有名な「こち亀」など、初期では警察官なのに市街で銃を乱射するなど滅茶苦茶であり、そんな中では二人乗りなんて些細な出来事だろう。

でも基本はギャグ漫画だったから、大きな批判にはならなかったし、何より面白かった。

ただ本作の問題点は、決してそこではない。

本作「スーパーカブ」の問題点は、読者(視聴者)が違和感を感じてしまったことが問題なのだろう。

本作は日常漫画という作風だが、それならば魅力を感じるためには、読者に共感とリアリティを感じ取らせることが必要不可欠だ。

しかし主人公は、元々根暗でバイクのメンテナンスを覚えたことで、高圧的な態度を取るようになる。

見た目こそ黒髪の大人しそうな風貌だが、中身はまさにバイカスDQN女子高生。

カブは人を殺せる道具だと主人公はモノローグで説明しているが、作中で一番玩具にしているのが主人公なわけで、意図せず皮肉になっている。

これは「同じカブ乗り」として恥ずかしい。

作品は主人公が取った法令違反や、明らかな独断に対するペナルティーもなく、ご都合主義で進んでいく。

たまたま警察に捕まらない、たまたま友だちが助かる。

この作品が致命的なのは、共感とリアリティに欠けていることに他ならない。

この「スーパーカブ」がこれだけ高評価なのか、理由がまるで分からない。

面白いと感じた人は、ぜひその理由を詳細にコメントして欲しい。

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