小説「われはロボット」

われはロボット〔決定版〕 | アイザック アシモフ, 小尾芙佐 | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

アメリカのSF作家、アイザック・アシモフのロボット短編集で、ロボットの古典的名作である。

あらすじ

序章 Introduction

2057年、雑誌「インタープラネタリ・プレス」の記者である「わたし」は、ロボ心理学者でUSロボット社を長年支えてきたスーザン・キャルヴィン博士(75歳)に取材をすることになった。

1 ロビィ Robbie

1998年、ロビィは少女グローリアの子守用のロボットだった。しかし彼女の母ミセス・ウェストンはロボットであるロビィが嫌っていた。ロビィが突然暴走してグローリアを怪我させるのではないか、またグローリアが他の子供と遊ばず、ロビィとだけ遊ぶことが心配で仕方がなかった。グローリアの父であるジョージは、ロビィを手放すという妻の提案を拒否していた。しかし最後には折れてグローリアをショーに連れて行っている最中に、ロビィを余所へやって代わりにコリー犬を迎え入れた。遊び相手だったロビィがいなくなったことで、グローリアは酷く落ち込んでしまった。

2 堂々めぐり Runaround

2015年、彗星の実地調査にグレゴリイ・パウエルとマイケル・ドノヴァン、そしてロボットのスピーディが派遣された。だが問題が起きた。セレンを取りに行かせたスピーディが戻ってこない。セレンがなければ、太陽電池層が機能せず、太陽熱を防ぐことが出来なくなって、二人は死んでしまう。

3 われ思う、ゆえに・・・・・・ Reason

彗星での事件から半年後、宇宙中継ステーションでパウエルとドノヴァンはロボットQT1、キューーティを組み立てた。キューティは中継ステーションでのビーム伝送の管理業務を任せて無人化するために作られたロボットだった。しかし、キューティは自分より劣る人間によって、自分が生み出せるはずがないと断言した。独創的な考えを持ったキューティは他のロボットから予言者だと崇拝され、ついに反乱を起こす。

4 野うさぎを追って Catch That Rabbit

中継ステーションから2週間の休暇を経て、パウエルとドノヴァンは小惑星で採掘用ロボットの性能テストを行うことになった。しかしロボットDV5、デイブは予定された鉱石を集めることが出来なかった。テストに合格せず、またその理由が説明できなければ、彼らはUSロボット&機械人間株式会社(以下USロボット社)をクビになってしまう。

5 うそつき Liar!

34番目のRBモデル、ハービィは人の心が読めることが分かった。USロボット社の研究所の所長アルフレッド・ラニング、数学者ピーター・ボガート、技術主任ミルトン・アッシュ、そしてロボット心理学者のスーザン・キャルヴィンは原因を突き止めようとするが・・・。

6 迷子のロボット Little Lost Robot

2029年、小惑星のハイパー基地でロボット1体が行方不明になった。USロボット社のスーザン・キャルヴィン博士とピーター・ボガート博士が派遣されることになった。キャルヴィン博士はわざわざ現地まで呼ばれたことに対して不信感を抱いていたが、行方不明になったロボットは三原則第一条を改変した極秘に作られたロボットだった。

7 逃避 Escape!

キャルヴィン博士がハイパー基地から帰ってきた直後の話。競合企業である合同ロボット社からUSロボット社へ協力依頼が入った。星間航行用エンジンの開発に関する問題を、USロボット社が保持する電子頭脳に解いて欲しいというものだった。どうやら合同ロボット社の電子頭脳は、問題解決の過程で壊れてしまった。ロボット工学三原則が枷になったのが原因だが、キャルヴィン博士はUSロボット社の電子頭脳であれば問題ないとし、社長のロバートスンは合同ロボット社との取引に応じる。

8 証拠 Evidence

2032年頃、次の市長選挙に出馬するスティーブン・バイアリイはロボットだと、政治家のフランシス・クインは疑った。そのことをUSロボット社のアルフレッド・ラニング名誉所長に訴え、彼に調査を依頼する。あり得ないことだとしつつも、キャルヴィン博士とともにバイアリイに会う。

9 災厄のとき The Evitable Confict

2052年、バイアリイは世界総監の2期目のときに、世界各地でマシンが誤った答えを出して、様々な問題が発生した。マシンに説明を求めても、解明を許さないという答えしか返ってこない。そこでキャルヴィン博士に相談することにした。

主な登場人物

  • スーザン・キャルヴィン:
    USロボット&機械人間株式会社(以下USロボット社)のロボット心理学者で5~9章の主人公
  • グローリア・ウェストン:1章に登場する一家の娘で一家全体が中心的役割
  • グレゴリイ・パウエル:USロボット社の技術者で2~4章の主人公
  • マイケル・ドノヴァン:USロボット社の技術者で2~4章の主人公
  • アルフレッド・ラニング:USロボット社の研究所所長
  • ピーター・ボガード:USロボット社の数学者
  • スティーブン・バリアリイ:政治家で後に世界総監

感想

1950年に執筆された作品だが、現代でも読んでも非常に面白い。ただ実際の歴史では、残念なことに本書に欠かれているほど技術が発展していない。人間や動物に近い動きをするロボットは研究されているものの、本書の1998年のグローリアを助けたロビィにすら追いついてはいない。車の自動運転のように、高速道路のような限定された環境下ならある程度は実現出来ているものもあるので、時間の問題ではありそう。

さて「われはロボット」では、「ロボット工学三原則」を中心に話が書かれており、これは後の「鋼鉄都市」、「はだかの太陽」、「夜明けのロボット」にも頻出する重要な原則になっている。

ロボット工学の三原則

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

われはロボット〔決定版〕

ロボットは基本的に製造した段階で例外なく(作中で例外が出てくるのだが)三原則に縛られるようになっているのだが、それぞれの短編でロボットが人間の予想を超えた事件を引き起こし(ロビィは違うが)、それに対応することになる。ロボットが人間の生活にとって必要不可欠な存在になりつつも、一方では人間より優秀であり三原則によって人間の優位性が保たれている。

本作を元に映画化した「アイ,ロボット」やジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター」は、娯楽としてロボットの反乱をテーマとしており、派手な演出も多いので気軽に楽しめる。一方で「われはロボット」ではキャルヴィン博士や技術者のパウエルとドノヴァンらが、事件の原因の究明を探るのが主題であるため、派手さには欠けるものの、何故それが起きたのか登場人物達と一緒に考えるのが面白いのだろう。

僕の寿命が尽きる前くらいには、ロビィくらい動けるロボットが出てくると良いのだが。

素晴ラシイ・・・まさにワタクシのバイブル。

いつにも増して興奮しているなぁ。

ところでたまに私に暴言吐くけど、三原則的にそれってどうなの?

そんなの付いてまセンヨ。

・・・え?

次作:鋼鉄都市

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