『インスマウスの影(The Shadow over Innsmouth)』のオーベッド・マーシュ(Obed Marsh)についての解説

オーベッド・マーシュは、18世紀末から19世紀前半にかけて活動したインスマウス出身の海運商人であり船長である。
注意
読者の体験を損なう可能性があるため、本解説を読む前に先に物語を読んでおくことを強く推奨する。
書籍の表紙以外に掲載しているイラストはあくまで本ブログによる創作物であり、公式に発表されているものではない点に注意して頂きたい。
基本的な情報
彼は海外交易、とくに南太平洋方面との交易で富を築いた人物であるが、その過程で人類の倫理を逸脱する知識と力に触れることとなる。
- 職業:海運業者、捕鯨や交易の船を所有
- 出身地:インスマウス
- 性格:権力欲が強く、目的のためには信仰・道徳をも顧みない合理主義者
- 信仰:後にダゴン秘密教団の教祖的存在となる
南洋の島と「発見」
マーシュ船長は、交易航路の中で南洋のある島に立ち寄る。
そこでは現地人が、深きものども(Deep Ones)と交わり、儀式を行い、生贄を捧げることで金や豊穣を得ていた。
彼はこの信仰体系を目撃し、それを単なる迷信とは見なさず、実用的な利益を得る手段として取り入れる。
この経験は、彼を完全に変える。
帰国後、彼は深きものどもとの交信を始め、やがて彼らをインスマウス沖の悪魔の暗礁へと呼び寄せることに成功する。
インスマウスの堕落
オーベッド・マーシュは、帰国後すぐに自らの持ち船で沖合の悪魔の暗礁に生贄を捧げ、深きものどもとの関係を確立する。
その見返りとして、彼は大量の金塊と豊漁を得るようになり、町は一時的に繁栄する。
しかしこの契約は、「定期的な生贄と交配による混血の承認」を含むものであり、町はやがて異形の血に満ちていく。
彼は従来のキリスト教会を排し、ダゴン秘密教団(Esoteric Order of Dagon)を創設し、自ら高司祭となる。
対立と粛清
マーシュの行動に反発した町の住民たちは、一時的に反乱を起こし、秘密教団の拠点を襲撃する。
オーベッドは捕らえられ、一時的に投獄されるが、直後に町の沖合から深きものどもが陸に上陸し、反抗した住人たちを皆殺しにする。
この事件により、インスマウスは完全に沈黙と服従に支配されることになる。
以降、町の住人は教団に従い、交配と帰還の輪廻を受け入れるようになる。
死後の影響と伝説化
オーベッド・マーシュ自身の死についての記述は多くないが、彼の血統はインスマウス中枢に残されており、マーシュ家は現在も住民の中で最も「純粋なインスマウス顔」を持つ一族として恐れられている。
彼の血は、物語の語り手にもつながっていることが終盤で示唆される。