高橋杉雄氏の「日本で軍事を語るということ」についての感想を書く
読むキッカケ
前回に書いたので、そちらを見てほしい。
内容
前回の「現代戦略論 大国間競争時代の安全保障」と重なる部分は少しだけ。
こちらはクラウゼヴィッツの名著「戦争論」を現代に落とし込んで、解説している部分も散見される。
独自性が強い部分を挙げるなら、それらを踏まえた上で自衛隊はどうしているかという部分だろう。
そして「戦争論」の価値は言及するまでもないが、あくまで19世紀に書かれた著作である。
海戦や空戦、宇宙やネット空間における戦争については、当時存在しなかった。
本書は「戦争論」が執筆された時点で存在しなかった領域まで、広くカバーしている点に価値があると思う。
感想
クラウゼヴィッツの「戦争論」は、名著ではあるものの、一般人にとって読みやすいとは言えない。
本書では戦争についてを平易にまとめられており、多くの人が読みやすく仕上がっている。
また筆者が防衛研究所の所属である点を生かし、自衛隊ではどのような準備がされているのか触れられていて、国民としてはまさに知っておきたい内容である。
一方で全体的に広く浅くといった感じで、実際に配備されている兵器の目的や性能などの詳細はほとんど触れられていない。
おそらくはは軍事オタクではなく一般人を対象にしており、現代における戦争とは何か、そしてそれに対する自衛隊の取り組みを知ってもらうことを目的にしているようである。
個人的な不満を述べるなら、宇宙とサイバー空間での内容がわりと薄かったことである。
宇宙は未知の分野であるため、取り上げるべき内容が少ないのは仕方ない。
しかしサイバー空間での攻防は、既にウクライナ侵攻において活発に行われていて、その効果は到底無視できるものではない。
昨今、アメリカや中国、ロシアのような大国やウクライナ、イスラエルといったIT先進国に比べ、日本のIT分野における水準が低いことは常々指摘されてきた。
ゆえに自衛隊や防衛省がどれほどサイバー空間での知見があるのか知りたかったのだが、本書の分量や内容だと残念と言わざるをえない。
もちろん機密情報ゆえに公開できない内容が多いことや、本格的に取り上げると分量が凄いことになるなどの諸事情があって、あっさりした内容になっているのかもしれない。