このニュースを見てから納豆を食べるようになった
クラウドファンディングという言葉を聞いたことがあるだろうか?
ようするにインターネット上で一般ユーザーに資金提供を行ってもらい、見返りを渡す仕組み。最近、日本でも利用者が増加している(と思う)。
良くあるのは新製品の開発費集めで、資金が集まれば、出資してくれた金額に応じて製品を送ってくれるというもの。チタン製の水筒とかあって、ちょっと欲しかった。中には学生さんがクラウドファンディングで学費を出資してもらい、見返りに一緒に食事する権利や手紙、趣味の旅行で撮影した写真を送るという強者も。
そうした中、炎上しているのが、茨城県水戸市にある納豆ご飯専門店「令和納豆」。
日本最下位の地で始める世界最高の納豆ご飯専門店 納豆スタンド「令和納豆」 – FAAVOつくば
ついつい興味を持って調べてしまったので、せっかくだから記事にした。
目次
事の発端
始まりは、見返りの一部である「納豆ご飯セット一生涯無料パスポート」である。
納豆ご飯セット一生涯無料パスポート
日本最下位の地で始める世界最高の納豆ご飯専門店 納豆スタンド「令和納豆」 – FAAVOつくば
10,000円(税込)
お返し品説明 ★一生涯納豆まみれになりたいあなたへ★
本プロジェクト一押しのリターンです。納豆スタンド「令和納豆」の納豆ご飯セット(梅コース)が一生涯無料で楽しめる永久会員パスポート。クラウドファンディング限定の会員パスポートとなりますので、今だけのプレゼントです。
□利用規約
・梅コース(納豆1種類100g、トッピング具材2種類、ご飯、味噌汁、漬物、お茶)限定。
・ご本人様のみ有効。
・1日1回限り。
・店舗の納豆が品切れになった場合は使用不可。
・譲渡禁止。
2019年4月1日からクラウドファンディングがスタートした時点で、ローカルなネットニュースでは話題になっていた模様?
納豆ごはん、1万円で「一生食べ放題」! 水戸の専門店がクラウドファンディング開始(全文表示) – ニュース – Jタウンネット 東京都
“こだわり納豆ご飯”が「一生無料」!! 超得パスポート1000名分追加 – Peachy – ライブドアニュース
近所に住んでいるなら、毎日通えば元は取れそうだ。ちなみに僕は納豆は嫌いだ。うどんとか他の好物なら、買ってたかも。ネタ的にも面白いし。
そして悲劇は起こった
調べている最中に、実際にパスポートを取り上げられた方のtweetを見つけたので引用したい。奇しくもちょうど1年前から始まっている。
ここまでのtweetでこの方がどれほど納豆が好きなのか、お分かり頂けるだろう。
そして悲劇が。
これは悲しすぎる、泣ける。
Googleのレビューには他にもたくさんの否定的な意見で溢れている。
そして、そのレビューも消されているという報告もある。
令和納豆側の主張
5月23日のtweet(現在は削除済み)。なぜか画像ファイル。
そして、「利益目的で無料パスポートを一方的に取り上げられた」という口コミに対する回答が、「今後も今まで通り使えます」というまったく答えになっていない回答。パスポートが取り上げられた事実があったかどうか、ハイかイイエで答えれば済むのにかえって不信感を生むことに。
そして本日6月1日のプレスリリース。
無料パスポートの権利失効に関する一部報道につきまして | 令和納豆
まとめると、
- 規約を説明した上で、納得できない人には返金、同意した人には無料パスポートを渡した。
- 客が従業員の指示に従わなかったし、アンケートも真面目にやらなくて口頭で注意したが、無理だった。
- パスポートを失効した人は以下の原因である。
- 従業員に罵声を浴びせて看板を破壊。
- 罵声を浴びせたことで他の客が帰って損害を与えた。
- 列に割り込みを行って、他のお客さんに迷惑をかけた。
- 事実と異なる記事を作成した人は訴える。
とまぁ、利用者との意見の相違が凄まじい。
ただ客観的に見ても気になる点はいくつかある。
例えばアンケートはそもそも任意で行うものが一般的であり、文面からほぼ強制的に行われたように伝わってくる。飲食店で行われる強制アンケートって一体なんだ?
また看板を破壊されたのなら、器物破損で警察に通報するのが普通の対応だろう。それをパスポート失効で済ませたのがよく分からない。それに関連して罵声を浴びせられたのもパスポートを失効(回収)した前か後かで話が変わってくる。
とにかく端から見ても奇妙としか言いようがないが、実際に店舗を訪れて当時の状況を知っておられる方がいれば、ぜひ教えてほしいものだ。
本件が与える影響
仮にこの事件が「利益目的によるパスポート失効」だとしたら、クラウドファンディング全体に対する信用失墜につながる可能性がある。他にも一生無料で食べられるパスポートを販売しているプロジェクトがあるが、今回の件で委縮してしまうことが気がかりだ。
またこのプロジェクトはKIBOWの「第5回 KIBOW水戸」で優勝した企画でもあるので、東日本大震災の復興を願う主催者や関係者に対しての責任もあるだろう。
「第5回 KIBOW水戸」開催いたしました! | 活動報告 | 一般財団法人KIBOW
忘れてはならないのが、未だにパスポートを失効されていない人もまだ多いはず(1100人分)。その方々が今後利用する際に、どのような条件で失効するのか、もっと具体的に明示されなければ不安だろう。
パスポートの失効にビクビクしながら食べる納豆ご飯は、さぞ美味しくないだろう。
個人的な感想
納豆納豆って書いているから、納豆が食べたくなった。
追記(2020-06-06)
J-CASTニュースが件の社長に取材を行った模様。その社長のコメントで気になったのがこれ。
今回の支援を『無料で定食を食べられる権利』としか思っていないような方がいます。無料対象の食事だけをして、スタッフが話しかけてもコミュニケーションを取っていただけない方がいます。私たちを飲食店スタッフとしか見ていないのでしょうか。
納豆ご飯「生涯無料パス」没収された3人が語る顛末と、運営会社社長の言い分 1万円CFめぐるトラブルを記者が追った: J-CAST ニュース【全文表示】
いやいや、飲食店じゃなければなんなのか。飯くらい黙って食べたい時もあるだろうに。これはお金もらっても行きたくないなぁ。
アンケートの中身も、
- 令和納豆をご利用いただいている理由(50文字以上400文字以下)
- 地方創生・地域活性化に必要だと思うこと(同)
- インターネット上で令和納豆の事実無根の誹謗中傷をする人達の対策に関するアドバイス(同)
- 梅コース以外のご飲食はお楽しみいただけておりますでしょうか(はい/いいえ)
といった具合に、採用試験の問題かと思わせるようなレベル。お客さんとしてではなく、従業員として扱ってそう。この会社と末永く付き合いたい人は果たしてどれほどいるのだろうか。
次々と向こうから燃料が投下されて、ツッコミどころが多すぎる本事件、今後のニュースにも注視したい。
今後の対応について(追記:2020-06-21)
いつも当店を応援し、ご利用くださりありがとうございます。「無料パスポートの権利失効に関する一部報道」につきまして、ご迷惑とご心配をおかけしております。無料パスポートの権利失効に関する当店の一連の対応を振り返り、お客様のご理解と納得を十分に得られないまま、一方的に権利を失効する対応をとってしまったことを深くお詫び申し上げます。
該当するお客様につきましては、ご支援いただいた金額10,000円を全額返金させていただきます。
無料パスポート権利を失効させていただいたお客様への今後の対応について | 令和納豆
前回までの強気な姿勢から一転、平謝りの謝罪モードに変わった。訴訟を起こされると敗訴すると考えたのだろうか。
ちなみに前回6月1日に出していた「無料パスポートの権利失効に関する一部報道につきまして」は見られなくなっている。原文は以下の通り。
2020年6月1日 無料パスポートの権利失効に関する一部報道につきまして 令和納豆
先日、インターネットやSNS上において、クラウドファンディングの返礼品である「無料パスポート(以下、パスポート)」を所有者から利益目的で一方的に取り上げた、との一部報道がありました。
無料パスポートの権利失効に関する一部報道につきまして | 令和納豆
この件に関して、当店で当時対応した従業員に事実確認を⾏いましたのでご報告いたします。
まず、返礼品であるパスポートに関して、当店といたしましてはその⽀援者の皆様と⽣涯のお付き合いをさせていただきたいという思いから、クラウドファンディングの思想と法律に基づいた信頼関係の構築を重視しております。その為、⽀援者の皆様には初回の利⽤時に当店が制定した利⽤規約をご説明差し上げ、同意いただけなかった場合はその場で返⾦、同意いただけた場合にクラウドファンディングのリターンである権利の有効化を⾏っておりました。
利用規約では信義誠実の原則に則り、当店及び他の会員もしくは第三者に不利益を与える行為、当店及び他の会員もしくは第三者を誹謗・中傷する行為、当店の運営を妨害或いは当店の信頼を毀損するような行為、入会手続きを含めた当店が行う全てのアンケートに対し虚偽の回答を行う行為、その他当店が当該会員の行為として不適切であると認めた行為等を禁止することを記載しております。
今回、パスポートの権利の失効を行なった所有者の方には、利⽤規約に同意をいただいておりました。しかしながら、ご来店の度に従業員の配席案内に従っていただけなかったり、ご注⽂の順番をお守りいただけなかったり、アンケートへの不誠実な対応をされたり、信義誠実の原則上の注意事項に違反する⾏為が多くございました。その都度お声がけをさせていただいたものの、残念ながらご理解を得ることができませんでした。
なお、今回の件以外にも以下のような所有者の方々においては、当店が⽬指す⽣涯のお付き合いをするための信頼関係の構築が難しいと判断し、従業員から利⽤規約に基づき理由を伝え、パスポートの権利の失効を行わせていただきました。
・従業員に対して罵声を浴びせ、退店時に当店の看板を破損させ、当店に損害を与えた方。
・従業員を罵ったことで、複数のお客様が退店され、当店に損害を与えた方。
・入店時の列や会計待ちの列に強引な割り込みをし、他のお客様に不利益を与えた方。 など
一連の手続きに関しまして、所有者と当店の間で交わした利⽤規約に基づいた処置であり、インターネットやSNS上の記事に掲載されたような「詐欺⾏為」や「⼀⽅的な剥奪⾏為」に当たる内容ではないことを弁護⼠事務所にも確認しております。
今回の件にまつわるインターネットやSNS上での当店並びに個⼈に対する、事実とは異なる投稿、捏造、誹謗中傷、脅迫⾏為、事実誤認の記事を作成した個⼈・企業に関しましては、法的⼿段を検討して参ります。
パスポートの権利失効は、クラウドファンディングに参加いただき、プロジェクトを応援いただいた背景を考慮すると大変苦しい決断でありました。しかしながら、飲⾷店を運営していくにあたり、看過できない実害も出ていることから、やむを得ずこのような判断に致りました。
この件に伴い、今後のご利⽤に関して不安に感じている所有者の方もいらっしゃると思います。ご来店の際には改めて利⽤規約をご説明差し上げ、ご理解を賜りたいと存じます。また、お店に込めた思いをお客様にお伝えする努⼒が充分に⾜りているかを常に考慮し、従業員一同、より一層の信頼関係の構築に向けて取り組んでいきます。
当店は引き続き、納豆ごはん専門店として、食の喜びや、楽しい時間をご提供できるよう、これまで以上にサービス品質の向上を目指して参ります。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 以上
この端から見ても驚くような強気な姿勢は、どこへやら。
ともかく落としどころとしては、妥当なところだろう。訴訟するにしても、どれほどの人が一万円のために労力を支払うか疑問だった。
後は本当に返金されるか、今までの対応から心配ではあるが。
余談だが、頑張って納豆を食べ始めたものの、未だに好きになれそうにない。嫌いってほどでもない。
とりあえず和辛子を入れてみたり工夫しているが、何か美味しい食べ方はないものか。
クラウドファンディング支持者と店員のやり取り(追記:2020-11-12)
支援者「何回かに一回は」
令和納豆のクラウドファンディング支援者への対応 – YouTube
店員「大前提として言いますね」
支援者「うん」
店員「あの支援者という方は、わざわざその安いのを選んで頼んだりはされないんですよ」
支援者「うん…」
店員「何回に1回とかって言わないんですよ」
支援者「ふっw」
店員「それはもう、真に、気持ちから発生しているものなので」
支援者「あー」
店員「そういうことは形式的なことは言わないんですよ我々」
店員「これは○○さんのどういう風に受け止めるか、どういう気持ちなのかっていう話なんですよ」
店員「何回に1回頼めば良いんでしょじゃないんですよ」
支援者「そうなんですかね」
店員「○○さんは本当に支援者として気持ちを持って注文してくれるかっていう話なんです」
店員「それがすべてここに書いてあります」
支援者「ここで頼むってことはそう言うことじゃないの?」
店員「じゃないです」
支援者「俺はそう思ってるんだけど?」
店員「それは違うってはい私が蹴りました」
支援者「な、なんで違うって」
店員「それは支援者だからです。クラウドファンディングの支援者だからです。○○さん、クラウドファンディングの支援者よーく調べてください」
店員「どう意味なのかってすべてが!すべて載ってます」
支援者「で、ダメな場合…やってけねえなって場合」
店員「やってけねえな、という場合・・・」
店員「それはでも○○さんが決めることですね」
支援者「うん、なら、やってけねえなって場合は」
店員「やってけねえなという場合は、もちろん権利は無効になります」
支援者「権利っていうのは?」
店員「こちらのパスポートは無効になります。なぜならば利用規約に違反している」
店員「ご同意いただけなかった違反?しているということで」
支援者「最初に投資した、投資ていうかそのあの、パスポートを買った時のお金っていうのはどうなるんですか?」
店員「いやいや同意していないままずっと使われてるので、ここまで食べた回数のお食事というのは、無効のほかに使われたということになってしまいます」
支援者「うん、で、俺の上げた1万円というのはどうなるんですか?」
店員「あーはい、あーいや1万円」
支援者「うん、俺はもともと…これを入手するために1万円払ったわけでしょ」
支援者「それは返してくれんの?」
店員「あのー入手するために払ったという訳じゃなくて」
支援者「返すことできるの?」
店員「あのークラウドファンディングで支援してくださった方というのは寄付の方が強いです」
支援者「募金じゃない」
店員「あのね、買ったものではないんです」
店員「あくまでもクラウドファンディングとご説明させていただきまして」
店員「えーと今あの利用規約の…を説明させていただきました
店員「…お願いを説明しました」
社長「あのークラウドファンディングというのは、あのー何か新しいことを・・・まー」
彼らに取ってみれば、クラウドファンディングは要するに募金らしい。
クラウドファンディングは
①投資型…資金提供者が組合契約を締結する等して資金を出資し、これに対して、収益の一部が資金提供者に分配されるタイプ。分配される金銭等が資金提供者へのリターンとなります。
例:セキュリテ(http://www.securite.jp/)
②寄付型…資金提供者が資金を寄付として提供し、何のリターンも発生しないタイプ。
例:JustGiving(http://justgiving.jp/)
③購入型…資金提供者は、一定の製品等を購入し、その対価として資金を提供するタイプ。購入した製品等が資金提供者へのリターンとなります。
例:KICKSTARTER(http://www.kickstarter.com/)
クラウドファンディングの法規制(基礎編) | AZX Super Highway(AZXブログ)
Web上では購入型で募っておいて、利用規約を盾に寄付型だと主張するのは無理があるだろう。
あれから半年経った今でも燻っている模様。食べ物の恨みは恐ろしい。
臨時休業のお知らせ(追記:2020-12-17)
新型コロナウィルスの感染拡大防止の対策として当面の間、臨時休業するらしい。
で、あのネバネバの豆のどこが美味しいわけ?
それを言っては身も蓋もないデス。