「トランスジェンダーになりたい少女たち」を読んで
読み終えたので感想を書く。
ちなみに原題は「Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters」らしい。
きっかけ
産経新聞で紹介されて、本書の存在を知った。
僕自身、トランスジェンダーの方と接する機会は非常に限られており、これまでにトランス女性(生物学的には男性)と話をした経験が数回ある。
個人的には、トランスジェンダーの方とどのような距離感で接するべきか分からず、結果的に性別について何も考えないようにして淡々と会話をしていた気がする。
本書を読むことで、すぐに役立つ知識を得られるとは思わなかったが、過去の経験や単なる興味から読んでみることにした。
内容
まず、本書は帯にも記されているように、トランスジェンダーを否定するものではない。
本書の中心に描かれているのは、アメリカの現代社会で、スマートフォンやSNSに深く関わる少女たちとその親の姿だ。
思春期の少女たちは精神的に不安定になりやすく、SNSや友人、インフルエンサーの影響を受けて「自分はトランスジェンダーではないか」と疑い始めることがある。
彼女たちは学校やSNS上でカミングアウトすることで賛同を得るが、親にはそれを知られないまま時間が過ぎる。
そしていずれ親にもカミングアウトするが、多くの場合、親はすぐには受け入れられない。
親子の対立が深まる中、少女たちはSNSや学校、セラピスト、医療制度の支援を受け、ブレストバインダーやホルモン療法、さらには非可逆的な手術を選ぶケースもある。
本書では、少女や親だけでなく、SNSのインフルエンサー、学校関係者、精神科医、セラピストなど、多くの関係者へのインタビューが収録されている。
賛成派・反対派の両方の意見を広く取り上げており、証拠となる文献を適宜提示することで、公平性を保とうとする著者の姿勢が感じられる。
感想
トランスジェンダーの存在は確かに重要な問題だが、実際の割合としては多くはない。
それにもかかわらず、アメリカでは性的少数者を保護する過度な方針や社会の風潮、一部の過激な主張によって、常識的なセラピストや精神科医が解雇やバッシングを受ける状況が生まれている。
その結果、トランスジェンダーだと正しく観察し見極められない人々ばかりが残り、精神的に未熟な少女たちが「自分はトランスジェンダーだ」という安易な結論に飛びついてしまう構図が見える。
日本では現時点でトランスジェンダーに関する問題はそこまで深刻ではないが、SNSやYouTubeの影響を受けて「自分はADHDや学習障害だ」と自己診断する若者が増えていると聞く(安易に決めつける医師にも問題があるが)。
これらの障がいが、彼らにとって集団的なつながりやステータスのような意味を持つのだろう。
僕は、このトランスジェンダー問題と「ネットと青少年」の関係には共通点があると感じる。
保守的な日本でアメリカの「トランスジェンダー推進」のような状況は起こりにくいとは思うが、あまり楽観視も出来ない。