家庭での二液混合による次亜塩素酸水の危険性について
ピューラックスやハイター(次亜塩素酸ナトリウム)と炭酸水を混ぜてpHを調整し、次亜塩素酸水を作るのが流行っている。ネット上で検索すれば、結構な数が引っ掛かる。
ちょっと危険だと思ったので、記事にした。
目次
危険である理由
メーカーが警告している
花王株式会社 お問い合わせ 「ハイター」や「キッチンハイター」から次亜塩素酸水が作れるの?
当然ながらメーカーが想定していない使い方なので、メーカーは責任を取らない(というか取れない)。 何か起こっても自分で責任を取らなくてはならない。
炭酸の抜けた炭酸水を使うかもしれない
pH緩衝作用を利用して炭酸で中和させるようだが、使用する炭酸水の二酸化炭素が抜けていたらただの水である。
もちろん混ぜた場合、普通に水で薄めたアルカリ性の次亜鉛酸ナトリウム水溶液となる。
無論、人体に有害なので、皮膚に掛からないようにすることはもちろん、絶対に目に入らないようにする。誤って皮膚に掛かったり、目に入ってしまった場合は、水で洗い流し、病院で見てもらった方が良い。
別の酸性の物で混ぜる人が出てくる
例えば一番有名なのが塩酸、入手しやすいクエン酸などで混ぜればいいのではと、思って試してみようと思う人が出てくるかも知れない。
次亜塩素酸水はpH4以下になると塩素ガスが発生するので、大変危険。最悪、死人が出る。
トイレ掃除で2種類の洗剤を併用し発生した塩素ガスによる中毒 職場のあんぜんサイト:労働災害事例
分量を計れない、単位を読めない人が作るかもしれない
例えば、ピューラックスを5ml入れるところを、勘違いして50mlいれる人が出てくるかも知れない。
分量を間違えると中和しきれず、やはり次亜塩素酸ナトリウム水溶液になる。それも恐ろしく高濃度の。
pHや有効塩素濃度を確認出来ない人が作るかもしれない
次亜塩素酸ナトリウムと炭酸水を混合させて作った次亜塩素酸水が、果たして期待通りのpHと有効塩素濃度であるか、確認する必要がある。
そのための道具は基本的に高価な物である。安い中華製のは信頼性に欠けるかもしれない。ちなみに写真のはすべて中華製である。
余談(追記:2023-04-20)
この中華製のpH測定器は、2022年末には正しい数値が表示出来なくなっていた。
精度も微妙で寿命は2年弱ほど。
ただ価格が2,000円以下だったことを考えると、十分頑張ってくれたと思う。
結論
僕は人には勧められない。勧める以上、例え法的責任がなくとも、道義的責任がある。
冒頭で自己責任って言うのは簡単だが、何が危険なのか明らかにした上で自己責任だと言うべき。
経験上1000人、10000人と教えれば、必ず間違う人、勘違いする人は出てくる。オレオレ詐欺が無くならないのも、クラスの大縄飛びが上手くいかないのも、同様の理由である。
某政党関係者の人が次亜鉛酸ナトリウムを飲んで、病院に駆け込んだ事案などが記憶に新しい。信じられないことをやる人は世の中に必ずいる。
間違えても取り返しのつくことなら別になんの問題もないのだが、この次亜塩素酸水の混合は取り返しのつかないことなる可能性がある。
なので、化学に詳しく自信があり、自分の責任が取れる範囲で利用できる人でない限り、決して混合すべきでないと思う。
自分で混合するのは不安で、販売されている次亜塩素酸水を購入している、しようとしている人もいるだろう。ただ独立行政法人の製品評価技術基盤機構(nite)によれば、製法や原料が明記されておらず、また根拠なく安全性を主張する製品も多い。
空間噴霧についても、ウィルスに対する有効性や人体への影響等の検証が進まず、企業が先行して販売している(日本の某大手メーカーの次亜鉛酸の空気清浄機)。
そもそも次亜塩素酸水がコロナウィルスに有効だという実証はまだない。コロナウィルスはエンベロープを持つウィルスなので、インフルエンザウィルスと同様に有効だという意見もあるが、あくまで推測である。
新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験の中間結果について
結果は不安定だった模様。継続して検証するようなので、今後の結果に注意したい。
またniteが有効な消毒液(界面活性剤)を検証しているので、現状では物への消毒はそちらを参照して買い求めた方が確実だろう。
新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第2弾)~物品への消毒方法の選択肢がさらに広がります~ | ナイト | 製品評価技術基盤機構
手などの消毒は石けんが性能とコストの両面で最強で間違いなさそう。
【事務連絡】社会福祉施設等に対する「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」の周知について
様々な情報が錯綜しており、ソース(情報源)に気をつけながら判断していくしかない。
余談だが、天下の厚生労働省でも1月末時点で、「ヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」と言い切っている辺り、どこを信じればいいのか、難しいところではある。
◆国民の皆様へのメッセージ
○新型コロナウイルス関連肺炎に関するWHOや国立感染症研究所のリスク評価によると、現時点では本感染症は、家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない事例が報告されているものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はありません。風邪やインフルエンザが多い時期であることを踏まえて、咳エチケットや手洗い等、通常の感染対策を行うことが重要です。
○武漢市から帰国・入国される方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、事前に医療機関へ連絡したうえで、受診していただきますよう、御協力をお願いします。また、医療機関の受診にあっては、武漢市滞在歴があることを事前に申し出てください。
中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(第5報)