本当に地球連邦軍はグズか?
地球連邦軍の英語表記について、Googleで調べてみたらサジェスト(オートコンプリート)で「地球連邦軍 クズ」という候補があった。これほど地球連邦軍の印象を悪化させている原因について、調べてみた。
目次
地球連邦軍とは?
地球連邦軍とはアニメ「機動戦士ガンダム」に登場する軍隊で、宇宙の植民地であるスペースコロニーの独立戦争に対して、連邦政府側の軍事力として描かれた。民間人だった主人公アムロ・レイが所属している(させられた)のも連邦軍である。
アムロみたいに、戦うのを嫌がるロボットアニメの主人公も珍しいよね。
戦争デスカラネ。嬉々として敵兵を殺しまくる主人公もどうかと思いマスヨ。
直接的な原因
機動戦士ガンダム MS IGLOOの影響
フル3DCGアニメ「機動戦士ガンダム MS IGLOO」の影響が恐らく最も大きいだろう。同作品は「機動戦士ガンダム MS IGLOO」と「機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線」の2作品が公開されているが、前者のMS IGLOOはジオン軍視点で描かれており、敵対する連邦軍の台詞や雰囲気がもはや893。連邦軍の印象の悪化に影響した。
主なシーンとしては挙げられるのは以下の通り。
【MS IGLOO -1年戦争秘録- 第2話「遠吠えは落日に染まった」】
アリゾナにあるジオンの第128物資集積所を、連邦軍兵士の乗るザクが味方だと偽って襲いかかった。
【MS IGLOO -1年戦争秘録- 第3話「軌道上に幻影は疾る」】
地上のオデッサ作戦から衛星軌道上へ撤退中のHLV(重量物打ち上げロケット)に対して、ボール2個小隊が無差別に襲いかかった。またその後、防衛に出撃したデュバル少佐の乗るヅダを嘲笑したGMのパイロットの台詞や笑い方がチンピラっぽい。
GMのパイロット
MS IGLOO -1年戦争秘録- 第3話「軌道上に幻影は疾る」
「フハハハハ、コイツ知ってるぞ!放送で世界に恥を晒したポンコツだぁ!」
「本当かぁ!」「ヒャハハハ!」「野郎!?くたばれ!!」
【機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第2話 「光芒の峠を越えろ」】
モニク・キャディラックの弟で幼くしてオッゴ小隊の隊長を任されることになったエルヴィン・キャディラック。そのオッゴ小隊とボール小隊が月周回軌道で戦闘に入った。互いに1機ずつ残る熾烈な戦いだったが、連邦軍のボールが投降しヨーツンヘイムへ曳航中することになった。しかし連邦軍のサラミス級巡洋艦が表れて発砲し、投降した味方のボールごとオッグを撃破した。台詞はもはや世紀末の人。
サラミス級巡洋艦の連邦兵士
機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第2話 「光芒の峠を越えろ」
「オラオラー!道を空けろ!ヒャァハハハーーー!!!」
【機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第3話 「雷鳴に魂は還る」】
停戦命令後でも一部の連邦軍兵士は戦闘を継続し、無防備だったジオン軍に襲いかかった。オリヴァー・マイは停戦命令が出ていることを訴えるも無視される。
地球連邦軍兵士
「フフフ」「ヘヘヘ」「ヘッヘッヘ」
「ノーサイドってか?レフリーはここにはいねぇーよ!!」オリヴァー・マイ「ああ!?待ってくれ!停戦命令だ!撃つな!」
地球連邦軍兵士「何がぁ停戦だ!俺達の仲間を散々焼き殺しておいてぇ!!」
オリヴァー・マイ「今さら抵抗はしない!」
地球連邦軍兵士「うるせぇ!くたばれ!!」
機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第3話 「雷鳴に魂は還る」
完全にヤンキーじゃん!
見方の兵士がジオンに殺されてますカラ、感情的になるのも分かりますケドネ。
機動戦士ガンダムの影響
本家の初代ガンダムでも、連邦軍への不信感を募らせた出来事がいくつかあった。特にリメイクとも言える漫画「機動戦士ガンダムORIGIN」では詳細に描かれているので、そちらから列挙しよう。
【第2巻】
ルナツー宙域でシャア搭乗のムサイを追い詰めたのにも関わらず、ルナツー所属のマゼランが割って入り攻撃の機会を逃す。
ルナツー司令ワッケイン
機動戦士ガンダムORIGIN 第2巻
「このジオンの海のただ中に隔絶されて在るルナツー基地がいかに生き延びているか」
「ここでの緊張を持続することが連邦全体にとっても戦略的にどれほど重要なことか」
【第3巻】
地球で連邦軍兵士がアムロの実家に娼婦を呼び込んで、勝手に居座っていた。
初代ガンダムの方は、低い士気や怠慢による悪印象が目立つ。
ワッケインの言ってること意味不明なんだけど。シャアをここで倒せていたら、かなり連邦軍が有利になったよね?
シャアの搭乗艦だったことを知らなかったでショウネ。あまりジオンを刺激して、ルナツーが本格的に狙われて攻略されることを恐れていたのデス。
間接的な原因
熱い武人を多く抱えるジオン公国将兵
部下からの信頼も厚く、勇猛果敢なパイロットが多い。
- ドズル・ザビ(初代)
- ガデム(初代)
- ランバ・ラル(初代)
- シン・マツナガ(MSV)
- ヴィッシュ・ドナヒュー(コロニーの落ちた地で…)
- ノリス・パッカード(第08MS小隊)
- サイクロプス隊(ポケットの中の戦争)
バーナード・ワイズマン
ハーディ・シュタイナー
ガブリエル・ラミレス・ガルシア
ミハイル・カミンスキー - デメジエール・ソンネン(MS IGLOO)
- ジャン・リュック・デュバル(MS IGLOO)
- ヴェルナー・ホルバイン(MS IGLOO)
- ヘルベルト・フォン・カスペン(MS IGLOO)
- アナベル・ガトー(0083 STARDUST MEMORY)
代表的な人物ばかり挙げたが他にもまだまだいる。彼らの勇敢さが、世に多くのジオニストを生み出す原因になったに違いない。一方の連邦軍は、軍全体の士気の低さや、主人公らが未熟(成長の過程を描かれるため)であるため、ジオン公国将兵の圧倒的な気迫と熱量に対抗できる人物はほとんど皆無である。
あれ・・・もしかしてみんな戦死してるような・・・。
勇ましくて良い人ほど先に亡くなってしまうのデス。
日本との関係
地球連邦軍は資源に恵まれた第2次世界大戦の連合国側にソックリであり、かなり意識して制作していることは見て取れる。一方、ジオン公国はザビ家の独裁やMSという画期的な兵器やそれによる戦術の登場により、当初の予測を覆した。それらの劇中での事実からドイツやイタリア、日本など枢軸国を強く模していると言えよう。また劇中においても、公王デギン・ソド・ザビが長男である総帥ギレン・ザビにたいして、ヒトラーの尻尾だと叱責している。
序盤の電撃戦によって講和へと持ち込もうとしたのは、大日本帝国の太平洋戦争での戦略と似ているように思う。日本人としてはジオンを応援したくなるのかもしれない。
弱者の味方
一年戦争の発端は、地球連邦政府によるスペースコロニーへの半強制移民(官僚や富豪は地球に残った)と、スペースコロニーに対する植民値化が原因である。その結果、民衆の不満がザビ家の独裁へと繋がる。
当初、ジオン公国は国力が地球連邦政府の30分の1以下と、普通に戦えば勝ち目がなかった。そこへミノフスキー粒子とモビルスーツの実用化、序盤のブリティッシュ作戦を含む電撃的な侵攻によって、膠着状態に持ち込むことが出来た。
視聴者としては、立場や戦力の弱い方を応援したくなるのだろう。
要するにジャイアンとのび太のケンカのようなものデス。
分かる。「帰ってきたドラえもん」では、めっちゃくちゃのび太応援したわ。
ジオン軍もクズ?
ブリティッシュ作戦
全長35km、直径6.4kmのスペースコロニーを大質量兵器に見立てて、地球連邦軍総司令部ジャブローに落とそうとした作戦。ガンダム史上でも屈指の大量殺戮を行って悪名は高い。作戦の過程でコロニー内の住民延べ2000万人を毒ガスで虐殺したという経緯もある。結果的に地球連邦軍の衛星軌道上で必死の抵抗に遭い、崩壊して目標から逸れたが、人的被害は23億人にも及んだ。
ちなみに史実でナチスがユダヤ人らに行った大量虐殺ホロコーストによる犠牲者は600~1,100万人と言われている。
こういった背景から、連邦軍兵士のジオンに対する強い憎しみが生まれたのは想像に容易く、やむを得ないという見方も出来るだろう。
110億人の半分の55億人が、一年戦争開始前に地球で暮らしていたようですカラ、その半数近くが被害を受けた計算になりマス。
リアルの地球で人口って60億人くらい?
2019年時点で77億人だそうデス。2100年には109億人に到達すると予測されているノデ、その頃には宇宙移民が始まっているかもシレマセンヨ。
世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳) | 国連広報センター
ジオン兵にもクズはいる
「第08MS小隊」のトップの部下でアスは、ゲリラの村で子供らに挑発行動を行い、怒ったゲリラの反撃でロケット・ランチャーがコクピット直撃し死亡する。
トップとデルは仲良く穏便に済ませようとしていたのに・・・!
結果的に交戦することになって、トップとデルも死亡していまいマス。部下を選ぶことは出来なかったのデショウネ。
民間人のスパイ起用
初代ガンダムでは、地球のベルファストで暮らす少女ミハル・ラトキエをスパイとして採用し、結果として戦闘に巻き込まれて、幼い弟、妹を残して死んでしまう。
ジルとミリーはどうなってしまうん?
アニメでは語られることなく終わってしまいマス。ただ漫画のORIGIN版だと、姉のミハルの帰りを待っているようデス。
感想
いろいろ書いたが、一番の原因は「MS IGLOO」だろう。セリフ回しの段階から連邦軍に対する悪意が散見しており、かなり露骨なジオンよりの作品である。しかし本家の初代ガンダムや他作品では連邦軍視点で描かれた物がほとんどであり、ジオン軍視点は映像作品は「MS IGLOO」と、ゲームでは「ジオニックフロント」くらいでかなり貴重だ。
ガンダムという作品がここまで愛されているのは、他のロボットアニメのように敵を一方的な悪として描いた勧善懲悪の作品ではなく、それぞれの人間同士の関係、国の立場や主張を詳細に描いた人間・戦争ドラマであったからこそ、ここまで息の長い作品になったと思う。
地球連邦軍びいきの諸君も「MS IGLOO」を視聴して、ジオニストになってみるのも面白いかもしれない。
連邦軍は姑息で汚い!ジーク・ジオン!!
また一人、ジオニストが生まれてしまいまシタカ・・・。