衆議院選挙2026ー自民党公約から読み解く「働いて働いて働いて働いて働いても報われない社会」

目次
はじめに
古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは次のような趣旨の内容を世に残している。
日本でも例外ではなく、平均所得(536万円)以下の世帯が61.9%となっている。
平均値は高所得層に引き上げられるため、平均以下が多数になるのは統計的に自然である。
しかし日本の場合、その差(平均536万円・中央値約405万円)が大きく、分布の歪みが顕著である点が問題である。
つまり日本の人口の半数以上が、平均所得以下の生活を送っていると言えよう。
ちなみに平均所得とは、税金や社会保険料が引かれる前の金額なので、実際に使える金額はもっと少ない。
2026年2月の衆議院選挙における自民党の格差是正について
自民党の2026年2月の衆議院選挙における公約・政策パンフレットを分析する。
結論
一定の「格差への配慮」は見られるが、構造的な格差是正に正面から踏み込んでいるとは言い難い。
主眼は「成長と物価対策」であり、「再分配」は補助的である。
公約の中で「格差是正」を意識した記述について
パンフレットには、次のような 「格差を意識した表現」は確かに存在する。
物価高対策としての
- 電気・ガス代補助
- 食料品価格高騰への給付
- 子育て世帯・低所得者支援
- 「年収の壁」見直し(178万円)
- 最低賃金引上げ・同一労働同一賃金の徹底
- 中小企業への価格転嫁支援
- 地方への重点投資・地方交付税の安定確保
これらはすべて「弱い立場がより強く打撃を受ける」ことへの対処ではある
よって「格差を完全に無視している」わけではない。
しかし内容を精査すると「性格」はどうか
重要なのは政策の性質である。
多くは「一時的・補填型」である点に注目したい。
- 物価高対策 → 給付・補助金が中心
- エネルギー価格対策 → 税廃止・補助
- 子育て支援 → 定額給付
これらは「格差を縮める」政策というより「格差が拡大しないよう応急処置をする」政策に近い。
構造(賃金決定・雇用形態・資産分配)にはほとんど踏み込んでいない。
非正規・雇用格差への踏み込みは十分か
文書では、
- 同一労働同一賃金
- 働き方改革
- 労働移動の円滑化
が掲げられているが、
- 非正規雇用比率を下げる数値目標 → なし
- 正規化への強制力ある制度 → なし
- 解雇規制・雇用慣行への改革 → 踏み込まず
つまり、「雇用の質」を変える覚悟は読み取れない。
再分配(税・社会保障)への姿勢はどうか
格差是正で最も重要な論点である
- 累進課税の強化
- 金融資産課税
- 高所得層への明確な再分配
については、ほぼ言及がない。
むしろ、
- 「資産運用立国」
- NISA・投資促進
- 成長による税収増
が強調されている。
これは「成長>自然に皆が豊かになる」という従来型の発想の延長でしかない。
全体構造:この公約は何を最優先しているか
この自民党の公約が貫く軸は明確だ。
- 危機管理投資
- 成長投資
- 経済安全保障
- 科学技術・産業競争力
「格差是正」は、
- 主軸ではなく
- 成長戦略の副次的成果として期待されている
位置づけに留まる。
つまり格差是正という点においては即効性と確実性に欠けていると言わざるを得ない。
結論
高市首相の自民党が掲げる公約は「格差を是正する政策」ではなく、「格差が政治問題化しないよう管理する政策」である。
これは、
- 支持基盤(企業・中間層)との整合
- 財政規律・市場評価への配慮
- 急進的再分配への政治的リスク
を避けた極めて自民党的な設計とも言える。
冒頭で述べた通り、日本の大半は相対的に低所得な層である一方で、高市首相は高い支持率を維持している。
これは多くの有権者が、再分配や格差是正といった政策の中身を精査した結果というよりも、人物像や安定感、他に現実的な選択肢が見当たらないことによって形成された支持である可能性を示している。
過去に長期に渡った安倍政権下の施策によって行われた金融緩和を中心とする政策の結果、資産価格上昇の恩恵が金融資産保有層に偏在し、賃金上昇が弱いまま物価が上昇したことで、低所得・非正規世帯の実質的な生活は圧迫された。
株価の上昇が生活実感に結びつかないのは、株式投資が「誰にでも開かれた成長手段」ではなく、「すでに生活に余裕のある層にのみ有効な資産形成手段」だからである。
貧乏な状態のまま株で人生を好転させるのは極めて非現実的だからである。
株式投資が機能するためには、少なくとも次の条件が必要となる。
- 余剰資金があること
- 長期で待てること
- 損失を許容できること
- 生活費と投資資金を分離できること
つまり生活に余裕がある平均所得でも上位層に限られるという訳だ。
構造的な問題が可視化されにくいまま、政策の検証が十分に共有されていないこと自体が、格差を固定化・拡大させる一因になっている可能性がある。